ゲームと選択

プラットフォームは「全部買え」とは言わない。ただ、次の一本がいつも目に入る

今夜遊べそうなゲームを一本探すつもりで、Steamを開いた。

十数分後、まだ一本も起動していないのに、ウィッシュリストは三本増えていた。アカウントにも、値札が折れそうなほど安くなり、買わないほうが損に見えるゲームが一本増えていた。

遊びたくないわけではない。遊びたいからこそ、次の一本を探し続ける。ただ、ゲームを探すのは簡単でも、実際に始めるには、今夜の時間と気力をどれに使うか決めなければならない。

次の一本が目に入り続ける仕組み

デジタルストアはいつでも開ける。トップページのおすすめ、ウィッシュリストの通知、季節のセール、期間限定の割引が、次々と新しい選択肢を目の前に運んでくる。ストアの外でも、配信やレビュー動画、SNSに流れてくるプレイ映像を見て、それまで気づかなかったゲームを急に遊びたくなることがある。

気になるゲームを見つけたあと、レビューを読み、ウィッシュリストに加え、納得できる価格になるまで待つこともある。待つこと自体がなくなったわけではない。ただ、そのあいだにも、プラットフォームは何度もそのゲームを目の前へ戻してくる。

Steamのトップページでは、アカウントにあるゲーム、実際に遊んだゲーム、購入履歴、フレンドが遊んでいるゲームなどが参照される。ウィッシュリストに入れたゲームが発売されたときや、通知対象の割引率に達したときには、メールや通知が届く。

サブスクリプションの対象に含まれていたり、ちょうど無料配布されていたりすれば、一本ごとの価格で迷う場面も一つ減る。どの方法であっても、次のゲームは候補に残りやすくなる。

どの機能にも理由がある

こうした機能には、きちんと役割がある。これだけ多くのゲームがあるのに、分類も通知もなければ、多くの作品は埋もれてしまう。開発チームには作品を知ってもらう機会が必要だし、プレイヤーも、それまで知らなかった作品に出会える。ウィッシュリストも、すべてを自分で覚えておくより便利だ。

どれか一つの機能が間違っているわけではない。気になるのは、それらが積み重なったあとに生まれる隔たりだ。

プラットフォームは「次に何を好きになりそうか」にはうまく答えてくれる。しかし、今夜の私に始められるだけの気力が残っているかはわからない。購入、受け取り、ウィッシュリストへの追加は、はっきりした数字として残る。いつ遊ぶつもりだったのか、どれくらいたつと興味を持った理由を忘れるのかは、取引データには表れにくい。

一つのゲームは、同時に数え切れないほど多くのプレイヤーへ届く。それでも、一回一回のプレイは、一人の人間が自分の時間と感覚を注いで、初めて起こる。

先送りされる選択

プラットフォームから、すべてのゲームを買えと命じられたわけではない。おすすめや通知、セールのおかげで、本当に好きな作品と出会えることもある。

ただ、どの段階でも次のゲームが目に入りやすくなるほど、判断を未来へ預けたゲームも増えていく。アカウントに追加するのは一瞬だ。そのあとダウンロードするのか、いつ始めるのか、そもそもなぜ遊びたかったのかをまだ覚えているのか。時間と気力のある未来の自分が、もう一度決めることになる。

そこで、もう一つ気になることが出てきた。システムが次の選択肢を先回りして用意してくれるたび、探す手間は省ける。その一方で、これは本当に自分がやろうとしていたことなのかと、立ち止まる機会も減っていないだろうか。

次のゲームはいつも目に入る。先送りされているのは、それとどう付き合うかだ。

参考資料